選択マーカー(2) ~ ポジティブセレクションとネガティブセレクション ~

ポジティブセレクションとネガティブセレクション

選択方法の例として、代表的なものに、抗生物質に対する耐性の有無や生存に必須な栄養素の

合成能の有無を利用したものがあります。

まず、目的の遺伝子を持つ細胞を抗生物質耐性を利用して選択する場合について説明します。

 

風邪をひいたときに処方されるように、抗生物質は人間にとっては細菌(毒)に対する解毒剤という

効果与えますが、細菌目線でいうと、抗生物質が「毒」になります。

よって、選択マーカーを保持している細胞を選別するために、抗生物質という毒を利用して、

細胞を抗生物質耐性のある細胞と抗生物質耐性のない細胞に分けることが可能になります。

※ここでは、細胞=細菌の細胞とします。

 

細胞Xは抗生物質耐性がなく、培養培地中に抗生物質が入っていることを前提とすると

1.細胞が選択マーカーを保持する場合

細胞X+選択マーカー⇒ 細胞X’(抗生物質耐性あり)⇒ 生き残る⇒ 増殖する⇒ 人が目で見て選択できる

2.細胞が選択マーカーを保持しない場合

細胞X ⇒ 細胞Xのまま⇒ 細胞死⇒ 増殖しない⇒ 選択されない

 

ここで、上記フロー1.のような選択をポジティブセレクションと呼びます。

つまり、ポジティブセレクションとは、選択マーカーを保持している細胞を

選択的に増殖させて選別することです。

ポジティブ = 選択マーカーを持っている細胞が生き残る と考えます。

 

特許明細書では、正の選択または陽性選択といった用語として出てきます。

ざっと見たところ、日本企業による出願ではポジティブセレクションと書いている割合が多く、

翻訳文では正の選択や陽性選択が多いようです。

 

逆に、ネガティブセレクションでは、細胞にとって毒となる選択マーカーを導入することで、

選択マーカーが導入されていない細胞を選別します。

 

少しややこしいのですがネガティブの意味は、

ネガティブ = 選択マーカーを持っていない細胞が生き残る です。

 

前提条件として、遺伝子Uを欠損させた細胞Yに対して、

外部から遺伝子Uを選択マーカーとして導入することを考えます。

この遺伝子Uは、ある物質Fを代謝して毒性物質Pを生成する経路に働きます。

 

遺伝子U

F————–>毒性物質P

 

物質Fを含む培地において、

3.細胞が選択マーカーを保持する場合

細胞Y+選択マーカー(毒)⇒ 細胞Y’⇒物質FがP(毒)に変化⇒ 細胞死⇒ 増殖しない⇒ 選択されない

4.細胞が選択マーカーを保持しない場合

細胞Y ⇒ 細胞Yのまま⇒ 物質Fもそのまま⇒ 生き残る⇒ 増殖する⇒ 選択される

 

上記フロー4.のような選択がネガティブセレクション(負の選択 or 陰性選択)です。

ネガティブセレクションに用いる選択マーカーは、

それ自体毒性タンパク質をコードしている場合や代謝経路を阻害する場合等いろいろ考えられますが、

いずれにせよ最終的に細胞に対して毒性を発揮します。

参考資料(実験方法および結果)

 

(備考)

ポジティブセレクションおよびネガティブセレクションの概念は、

選択マーカーによる選択のみで用いられる概念ではありません。

例えば、抗原抗体反応や分化・未分化細胞の選別においても

これらの概念は使われます。

 

次に、特許の要約を読んでみます。

 

選択マーカー(1) ~ 定義 ~

選択マーカー(3) ~特許を読んでみる~

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